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松江地方裁判所西郷支部 昭和41年(ワ)6号 判決 1970年1月30日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の求める裁判

一、原告

島根県隠岐郡西郷町大字東郷字石畑三五番山林一反の内、別紙図面の9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、C、B、A、ト、ヘ、6、7、8、9の各点を順次結んだ直線内の土地ならびに右地上立木が原告の所有であることを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決。

二、被告

(一)  本案前

原告の請求を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

(二)  本案

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

第二、当事者双方の主張

一、原告の請求原因

(一)  原告は島根県隠岐郡西郷町大字東郷字権現谷九番山林三畝(以下これを単に九番山林という。)を所有し、被告は同大字字石畑三五番山林一反(以下これを単に三五番山林という。)を所有し、右両山林は隣接している。しかるところ、原告は昭和三七年、本訴被告を被告として右両山林の境界確定の訴えを西郷簡易裁判所に提起し(同裁判所昭和三七年(ハ)第一六号事件)、その第一審判決では原告主張のとおり別紙図面9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20各点を順次結んだ直線が境界として確認されたが、被告が松江地方裁判所に控訴し(同裁判所昭和三九年(レ)第四号事件)、その控訴審判決では被告の主張する別紙図面6、ヘ、ト、A、B、C、20各点を順次結んだ直線が境界として確認され、原告はこれに対し、広島高等裁判所に上告した(同裁判所昭和四一年(ツ)第一八号事件)が、同裁判所で昭和四一年七月一二日上告棄却の判決がなされ、右両山林の境界は右控訴審判決のとおり確定した。したがつて、別紙図面の9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、C、B、A、ト、ヘ、6、7、8、9の各点を順次結んだ直線内の土地(以下これを本件土地という。)は三五番山林の一部ということになつた。

(二)  しかしながら、本件土地は、明治二八年一〇月一八日原告の先々代祖父木村久四郎が周吉郡、穏地郡、海士郡、知夫郡の四郡共有地(隠岐国有地)であつた九番山林を四郡管理者より買い受けたときから、これを九番山林の一部として所有の意思をもつて平穏、公然に占有を続け、かつ、その占有の始めにおいて善意、無過失であつたから、同日から一〇年後の明治三八年一〇月一八日の経過とともに同人の取得時効が完成し、その効力は起算日に遡るから、明治二八年一〇月一九日に本件土地およびその地上立木の所有権は同人に帰したものである。かりに、久四郎において右占有の始めに善意、無過失でなかつたとしても、明治二八年一〇月一八日から二〇年後の大正四年一〇月一八日の経過とともに同人の取得時効が完成し、遡及して同じく明治二八年一〇月一九日に右所有権は同人に帰属した。そして、右所有権は、久四郎の大正五年四月一二日の死亡による家督相続により木村愛次郎に、同人の昭和二八年二月二日の死亡による相続により原告に順次帰属した。

(三)  よつて、原告は被告に対し、本件土地およびその地上立木が原告の所有であることの確認を求めるため本訴に及んだ。

二、被告の本案前の主張

本件土地が被告の所有であることは、原告主張の請求原因(一)の訴訟によつて確定したものである。すなわち、右訴訟によつて九番山林と三五番山林の境界が確定されたと同時に、その確定により両山林の所有者である原告と被告の所有権の範囲も確定されたものである。したがつて、本訴は既に判決の確定した事件についての再訴であつて、却下されるべきである。

三、被告の本案に対する答弁と主張

(一)  請求原因(一)の事実は認める。

(二)  同(二)の事実は否認する。

(三)  かりに、原告主張のように、久四郎が取得時効により本件土地の所有権を取得し、愛次郎および原告が順次相続によりその所有権を承継したとしても、右時効取得の登記がなされていないから、原告は、右取得時効の関係では第三者であり、現に三五番山林の所有名義人である被告に対し右時効取得を対抗することができないものである。すなわち、原告主張の時効完成時である明治二八年一〇月一九日または大正四年一〇月一八日当時における三五番山林の所有者はいずれも東郷部落(いわゆる地下)であつたところ、訴外原次芳が昭和二三年一〇月に東郷部落から競争入札で落札してこれを買い受け、さらに被告が昭和二四年二月に右訴外人からこれを買い受け、その登記簿上は、東郷村が昭和二七年七月一六日保存登記をしたうえ、中間省略により同日被告のため所有権取得の登記がなされたのであり、現に被告が三五番山林の所有名義人となつているのである。

四、被告の主張に対する原告の反駁

被告は、原告主張の時効期間進行中も時効完成時においても三五番山林の共有者の一人であつたから、被告はいわゆる時効当事者間ではなく、原告は登記がなくとも本件土地の所有権を被告に対抗することができる。

第三、証拠関係(省略)

別紙

<省略>

図面測定表

<省略>

『基点0は島根県隠岐郡西郷町大字東郷所在〓 県立隠岐水産高校の北方約1,000メートルを距てた高地にある水流(谷川甲)中、滝状になつた部分の西端、短い木抗を打つた点』

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